ランドナーとは「旅する自転車」
ランドナーとは、フランス発祥のツーリング車のこと。フランス語の「ランドネ」(小旅行)に由来する「旅する自転車」の意だ。日帰りや2~3泊程度のキャンプ旅行用途で使われることが多く、バッグ類をたっぷり積み込める仕様になっているのが特徴。 これに乗り、日本一周や世界一周にチャレンジする猛者も後を絶えない。ランドナーの変遷
クラシカルな雰囲気が魅力のランドナーだが、時代にあわせランドナーのスタイルにも少しずつ変化が見られる。舗装路など環境の変化、パーツの互換性から、今や純ランドナーというよりも、新世代ツーリング車ともいえるモデルも浸透し始めている。2017年に惜しまれつつ生産終了となったGIANTの「グレートジャーニー」もそのひとつだった。
ジャイアント「グレートジャーニー」(C)GIANT

650AタイヤにWレバー*、ケーブル上出しのブレーキレバーなど、まさに正統派ランドナー「エンペラーツーリングマスター」(C)丸石サイクル
◆ツーリング車をもっと知る!スポルティーフとの違い、わかりますか?
ロードバイクとどう違う?ランドナーの特徴
旅仕様に設計されたランドナーは、普通のロードバイクと一味違う。特徴的なパーツを解説しよう。ハの字型ハンドル
ロードバイクとの違いは、まずランドナー用に設計されたドロップハンドル。ハンドルを握った手がフロントバッグに干渉しないよう、ハの字形状にされている。
ハの字形状のハンドルに、ワイヤーが上に出るタイプのブレーキ。アラヤ「スワローランドナー」(C)ARAYA
フレーム:クロモリ製&ホイールベースが長めのジオメトリ
頑丈で剛性があるクロモリ(クロムモリブデン鋼)製が主流。非常に優れた強度重量比を持ち、溶接が容易である。衝撃に強く、しなやかなウィップ感を持つことから自転車フレームに活用されてきた。現在、ロードバイクの主流はカーボン製だが、転倒などで破損したフレームは修復が難しい。しかしクロモリ製は溶接を加えることで修復が可能で、マニアからの信頼も厚い。難点は腐蝕耐性が十分でないことである。 ◆修復可能ってどういうこと!?自転車旅のプロが実体験を元に解説。 またチェーンステーのチューブが長めでホイールベースが大きい。これは直進安定性を高めるため、あるいは太いタイヤを履いてフェンダーを装着するためなどの理由がある。これらすべてが疲れにくく長距離を走れるための仕様なのである。太めのタイヤ
700×23〜25Cのロードバイクに比べ、ランドナーの履くタイヤは太い。650A、または650Bという26インチ系のリムを使用するからだ。そのため650×35Aや650×38Bといったサイズのタイヤが主流。幅は30mmほどだ。荷物積載のためのキャリア

フロント&リヤキャリヤ、バッグを装着した「FJC4」(C)Panasonic
泥除け:雨天走行も想定

輪行のしやすい「分割式リヤマッドガード」は正統派ランドナーの象徴的パーツのひとつ。エンペラー ツーリングマスター(C)丸石サイクル
輪行がしやすい設計
旅先への移動、またはトラブルで鉄道を利用する際、輪行のしやすさはランドナーにとって大きく重要。折りたたみ式のフェンダーやダブルレバー式シフト、フォーク抜きヘッドなどの仕様で、輪行袋にすっきり収納できるように設計しているものを選びたい。
コンパクト設計で輪行性能バツグンの「FJC4」(C)Panasonic
ランドナーがハマるシチュエーション
「旅」と一言で言っても、そのスタイルは多岐に渡る。その一例を紹介していこう。それにランドナーは決して旅専用ではないのだから、ランドナーで街を流したっていいのだ。キャンプ
前後にキャリアを取り付け、キャンプ道具をたっぷり詰め込められる。最近はキャンプ道具も軽量でかさばらないから、ランドナーとの融和性も抜群。
◆まずはご近所キャンプ、やってみる?
→「クロモリロードバイクで行く「ゆるキャン」、初心者はどんな装備を準備すればいい?」
◆自転車×キャンプの魅力にどっぷり浸かる!
→「自転車旅のプロ山下晃和さん(モデル兼トラベルライター)が、バイク&キャンプの楽しみ方を伝える連載企画」
◆関東の自転車で行けるキャンプ場をピックアップ
→「初心者むけ!自転車でいけるキャンプ場15選 ~関東編~」
小旅行や長距離ツーリング
長距離ツーリングでも活躍するランドナー。旅先を渡り走り、ときには輪行で別の場所へ移動するなど、旅の領域がグンと拡がるのが魅力だ。
日本一周・世界一周
旅のプロフェッショナルはランドナーで日本、そして世界を走破する。大荷物を積んでも丈夫な機材をオーダーメイドするなど、その夢を追う者は絶えない。
通勤通学や街乗りなど日常使いにも
日々の足替わりになってくれるのが、ランドナーのもうひとつの特徴。キャリアラックとフェンダーを取り外し、街を優雅に走り流すのも良い。【完成車】ランドナーおすすめ7選
ここからは実際のモデルを1台ずつご紹介していこう。まずは完成車(DAVOSのみフレームセット)で入手可能なモデルだ。ARAYA(アラヤ)|TURツーリスト
日本におけるホイールのゴールデンサイズであるハチサン26x1-3/8を採用したモデルで、オールラウンドな走行性を有しており、かつ日本の自転車店ならほぼ入手可能。フレームポンプ用のペグやアルミ製のフェンダー、フロントバッグをサポートする前キャリア、輪行を考慮したダルマネジやチェーンフックなど、ランドナーの仕様をふんだんに盛り込んでいる。カスタムによって本格ランドナーのサイズともいわれる650x38Bのホイールを装着することもできる懐の広さも魅力である。
- 価格:99,000円(税抜)
- フレーム素材:クロモリ
- コンポーネント:シマノ・クラリス
- サイズ:490mm, 530mm
- カラー:ナチュラル―カーキ、ボルドーレッド
TREK(トレック)|520 Disc
開けた道のために作られたスチール製ツーリングバイク。トレックのラインナップの中でも最も長い歴史を持つ。ラックとフェンダー用マウント、登り坂に適したワイドなギヤ比、安定したツーリング向けジオメタリーにより、荷物を満載して数日間の旅に出たり、一日中冒険したりするのに最適な一台。
- 価格:145,000円(税抜)
- フレーム素材:クロモリ
- コンポーネント:シマノ・ソラ+アリビオ
- サイズ:48、51、54、57
- カラー:Anthracite、Diablo Red
丸石サイクル|Touring Master(エンペラーツーリングマスター)
長く愛されるスタイルを現代に継承する650Aランドナー。オリジナルヘッドパーツと分割式泥除けの採用でコンパクトに輪行が可能だ。カットラグで組まれたオールクロモリフレームは、美しさだけではなくタフさを兼ね備え、あなたと旅の道具一式を確実に目的地へと連れて行ってくれる。
- 価格:130,000円(税抜)
- フレーム素材:クロモリ
- コンポーネント:シマノ・クラリス
- サイズ:490、520、550mm
- カラー:グリーン、オレンジ
LOUIS GARNEAU(ルイガノ)| BEACON9.0
- 価格:105,000円(税抜)
- フレーム素材:クロモリ
- コンポーネント:シマノ・デオーレLX
- サイズ:370、420、470、520mm
- カラー:LGマットブラック
MASI(マジィ)|スペシャーレ・ランドナー・エリート

- 価格:199,000円(税抜)
- フレーム素材:クロモリ
- コンポーネント:シマノ・105
- サイズ:49、51、53、56
- カラー:グロスブラック
DAVOS(ダボス)|603 ランドナー

- フレームセット価格:62,963円(税抜)
- フレーム素材:クロモリ
- サイズ:480、500、520、540mm
- カラー:ディープグリーン、フロリアローズ
KONA(コナ)|スートラ
MTBの世界で定評があるKONAが手掛けるランドナー。剛性が高いクロモリフレームにブルックス製サドル、コルクのバーテープ、BarConシフター、フェンダーとラックを標準装備。また、コンポーネントには最もワイドなギヤ比のシマノ・デオーレ(3×10速)を搭載し、転がり抵抗の少ないWTBホイールを採用している。タイヤは700×40C。2020年モデルはチェーンガードを装備、日常使いにも最適だ。
- 完成車価格:168,000円(税抜)
- フレーム素材:クロモリ
- コンポーネント:シマノ・デオーレ
- サイズ:46、48.5、52、54
- カラー:グロスデザートグリーン
【オーダーメイド】おすすめ5選
ランドナーのオーダーメイドを受け付けている工房もある。選んで間違いのない工房を厳選して紹介しよう。トーエイ
設立は1955年。日本のランドナーの歴史はトーエイ(東叡社)とともに歩んできた。美しく調和のとれた自転車を作ることで人気が高い。ランドナーなどツーリング車を得意とするが、ロードバイクや小径車など幅広く制作可能。フレームはもちろん、キャリアやステム、変速機などもオリジナルで作ってしまう技術力は、海外でも高く評価されている。
オーダーは全国各地のトーエイフレーム取扱店を通じて注文できるほか、埼玉県川口市の工房でオーダーの相談・制作も受けている。2020年現在の納期は、3ヶ月から半年ほど。
東叡社のイマがわかるインスタグラムも要チェックだ。
公式HP:東叡社
グランボア
日本のオーダーメイド工房。ランドナーはただ走るための道具ではなく、幾年月も共に過ごす旅の相棒だ。乗り手の個性に合わせたフレーム素材からの自転車作りに定評があるグランボアは、ノスタルジックなものだけではない。機能重視の現代のパーツで構成されている。フルオーダー、セミオーダーともに可能。
公式HP:CYCLES GRAND BOIS|グランボア
SWワタナベ
トーエイに12年勤務した後、伝説のビルダーと呼ばれる梶原利夫氏に師事した渡辺捷治氏が独立して作った工房。氏が作り出す自転車は、車種でカテゴライズされることがない。「ランドナーを作る」ではなく、どんな乗り方をするのか、どういう道を走りたいのか、どんな旅をするのか、乗り手のライドスタイルを徹底的に追求して自転車が作られていく。こだわりは「走りが楽しい自転車を作ること」。競輪のプロ仕様フレームでも優秀な成績と高い評価を得ている。 公式HP:SW.WATANABEパナソニック FJC5(セミオーダー)

- 販売形態:フレームセット
- 価格:115,000円〜(税抜)
- カラー:全34色
- サイズ:460、510、550mm
CHERUBIM(ケルビム)
1965年、日本にスポーツサイクルが普及する以前の時代に創業された、オーダーメイド自転車の老舗工房。中でも「Super Touring」は、今の時代の規格で蘇ったランドナーだ。オーダーランドナーは敷居が高いと思われがちだが、そんなことはない。歴史を継承しつつモダンなテイストを散りばめ、より現代的な走りを実現。全体的なフォルムや細部に至るまで美しさを纏ったモデルは、あなたと世界中を旅する生涯のパートナーになってくれるだろう。ちなみに現在、世界一周の自転車旅行を敢行中の高橋せんまる氏も、ランドナーではないがケルビム製バイクに乗っている。
公式HP:CHERUBIM(ケルビム)今野製作所
2019年のランドナーも見てみる
まとめ
昨年度までラインナップされていたラレーのクラブスペシャル、ミヤタのアイガー、そしてビアンキのアンコラがカタログから消えた。いずれも良質なランドナーだったため、いささか寂しさを感じている。実際に今、ランドナーを作っているメーカーは絞られているのが現状だ。しかしランドナーに興味を持っていたり、実際に旅自転車として乗っている人は少なくない。少数精鋭のモデルの中から自分好みの一台を練ったり、旅を夢想してランドナーを探し求めるのは楽しいこと。そしてハマればハマるほど奥が深いのがランドナーの世界だ。決してスピーディーで、何かと競って走る自転車ではない。マイペースで走る喜びを知ることができるのがランドナー。旅の相棒として、その存在は大きい。監修:
サイクルアシスト オオバ 大場忠徳
VIKING石橋
