尾道の石坂をダウンヒル! 「RED BULL HOLY RIDE 2016」レポート

尾道の石坂をダウンヒル! 「RED BULL HOLY RIDE 2016」レポート

古いお寺と坂の街として有名な尾道。その尾道の坂を自転車で駆け下りるというエクストリームなイベント、8/27に広島県尾道市の千光寺で開催された、第5回目の「RED BULL HOLY RIDE(レッドブル ホーリーライド)」を取材してきました!

レッドブル ホーリーライドとは

通常は山の中で行われるダウンヒルレースですが、RED BULL HOLY RIDE(以下ホーリーライド)はその名の通り、お寺や神社など聖なる(ホーリー)場所を走るレース。いままで日本中のさまざまな聖なる場所がそのレースの舞台になってきました。 第1回大会は京都の石清水八幡宮、第2回は愛媛の石鎚神社本社、第3回は大阪の応頂山勝尾寺、第4回は再び京都の石清水八幡宮、そして今回尾道の千光寺で開催。 特に今回の尾道大会では千光寺と宝土寺という山の上と下にある二つのお寺を、ホーリーライド初となる一般公道を使用して結んだ、全長約1.1キロ、高低差約100メートル、最大斜度22度、石段数も320段という特別なコース。 アマチュアレベルから世界を転戦しているライダーまで、年齢は13歳から59歳、日本だけでなく海外から、男女合わせて121名の選手が参加しました。

コースの紹介

大会の舞台となったのは、尾道の千光寺から宝土寺を結ぶ参道や路地。坂の街で有名な尾道だけあって、コースは坂道だらけ、しかも曲がりくねっています。千光寺の参道を抜けて、コースの後半は民家の生活道路(坂)を一気に下り、ゴールは線路脇の宝土寺。 スタート地点に行くために、麓から「千光寺山ロープウェイ」に乗りました。 スタート地点は「千光寺山」の上。そこまでロープウェイに乗ります。 ロープウェイからの眺めも抜群で、丘の中腹にある千光寺の全貌を見ることができます。 ロープウェイを降りると、展望台。周辺には既にライダーたちが集結していました。 ダウンヒル用自転車の特徴は、太いタイヤと、前輪フォーク部分のサスペンション、クランク1とシートポスト2の間に仕込まれたサスペンション*3。 用語解説:*1・・・駆動部分でペダルへと繋がるアームが伸びている部分 *2・・・サドルを支えるパーツ *3・・・バネになっていて衝撃を吸収する 過去大会の様子などを見つめる選手たち。 スタート地点。予選開始前には試走タイムがあり、参加選手たちがコースを確かめながら走り下りていきます。 コース序盤。本当に平らな道がありません。公園の階段部分もコースとして使用しています。 階段を下るとジャンプ台がありました。 広場には大型ディスプレイが設置してあり、レースの様子を見ることができます。 公園を通過すると、一気に景色が開けてきます。 尾道の街を一望できる景色が見られるスポットですが、勢い良く降りる選手たちが景色を眺める余裕があるかどうかはわかりません。 写真右手に映っているカメラのある場所が観光名所の「ポンポン岩」です。名前の由来は岩を叩くと「ポンポン」と音がすることに由来しています。 そしてここから一気に細い参道に入ります。 参道を抜けると、コースの後半はホーリーライドでは初の試みとなった公道部分。普段は観光客や近隣の住民が行き交う急な階段です。 階段の先には海が見えます。この傾斜・この幅を自転車で通りぬけしなければなりません。 今回のコースで最も狭く、かつ急な曲がり角となる民家の玄関先が見えてきました。 こんなカーブをスピードを出した自転車で曲がりきれるのか、考えただけでもヒヤヒヤします。 続くのは自転車1台がようやく通れそうなほど狭い幅の道です。 ここを過ぎるともうすぐゴールの宝土寺です。 ゴール地点の宝土寺では、レッドブルのアーチが選手を迎えます。 全長約1.1km、高低差も急な坂もあり事前下見として歩いただけでもかなり大変なコースであることがわかりました。

レースの様子(予選)

まずレース開始前に、今回の舞台となる千光寺の本堂でレースの安全と成功を祈願する開会式が行われました。 千光寺本堂、参加ライダーや関係者が集まりレースの安全を願います。 本堂からの景色は見事なものでした。配下に見下ろす尾道の街、海を挟んだ対岸にある向島までご覧のように一望できました。 続いて尾道市長による挨拶です。今回のコースは日本遺産にも指定されたエリアの真ん中を通ることが説明されました。 祈祷では、住職の口から「レッドブル ホーリーライド」という文字が発せられる貴重な瞬間を目撃しました。 住職から参加者全員に配られたお守りです。今一度安全に走りきれることを参加者一同願います。 参加者・観戦者で境内は盛り上がりをみせます。何も知らずに訪れた観光客の人は、この背景にさぞ驚かれたことでしょう。 開会式が終わり、午前中は予選が開催された。 予選は選手が1名ずつ出走するタイムトライアル形式。 タイム上位32名が決勝トーナメントに進む。 スタート付近にはコスプレをした観客も集まりだし熱気を帯びていきます。また出走順にならんでスタートを待つ選手たちはレース直前にも関わらず、和やかで楽しそうな雰囲気で準備をしていました。 いよいよ予選がスタート。 最初のコーナーに向けて、勢い良く飛び出してくる選手たち。 通常のダウンヒル競技では、全身プロテクトをつけることが義務づけられています。 10代前半と思われる未来の大物ライダーからキュートな女性のライダーまで参加者の幅もとても広かったです。 レッドブルがこの日の為に持ち込んだのがこのクレーンカメラです。このカメラでスピード感のある映像が撮影されます。 上空にはドローンの姿も。 この他にも選手のヘルメットやハンドルの上など、コース内のさまざまな場所で撮影用のカメラが設置してあったのが印象的でした。またそれらカメラで撮影された動画は文末にあるレッドブル ホーリーライドの公式サイトでご覧いただくことが可能になっています。 参加ライダーもユニークでした。ご当地 広島カープのハッピを着て走るライダーや、 下関から参加されたのでしょうか、ヘルメットにフグをつけたライダーや、 お寺での開催にちなんだのか、大仏のTシャツを着たライダーまで。 こちらの方は取材チームが大会前日夜、尾道U2で食事中に知り合ったライダーです。自作(!!)というチタン製の自転車で参加していました。 ライダーの服装や自転車から、スピードや順位を競うだけではなくレースに参加すること自体を楽しみにしてきたのだということがよく伝わってきました。 続いて、前半の見せ場、ジャンプ台。 一人で走れる予選では、このジャンプ台で格好良いジャンプを決めるライダーが見られました。 しかしこれは予選ならではのファンサービスで、決勝トーナメントではこの同じジャンプ台に4人の選手が突っ込みます。決勝でこのジャンプ台が目を離せないスポットの1つになることは間違いありませんね。 高いジャンプを決める選手に観客も盛り上がる。 後述するインタビュー取材に協力してくださった、スペシャライズドのテストライダー藤田翔也さんの姿も。 【レースの様子(決勝)】 予選が終わり、午後からはいよいよ決勝トーナメントの時間。 出走リストが発表される。 予選のタイム順に上位32名によって決勝トーナメントが行われた。 決勝トーナメントは4人1組で出走し、上位2名のみが勝ち進む「4クロス」という形式で行われる。
予選で余裕のジャンプを披露していたライダーたちがとてつもない勢いでジャンプ台に突っ込んでくる。 予選の取材で危惧していた通り、選手同士が空中で接触してしまい見ている側がヒヤヒヤする場面も。 通常のダウンヒルの大会では見ることのできないこのような場面が、観客から近い距離で見ることができるのもレッドブルホーリーライドのレースならではだと感じました。
参道の坂道をトップスピードで走り抜ける為一瞬で通り過ぎ、あまりの勢いに見ている私達も圧倒されます。 レース全体の映像は広場に設置された大型ディスプレイで観覧できる為、そちらでレース全体を追うのも楽しそうでした。 1回戦、2回戦、準決勝、決勝の順でトーナメントが進んでいきます。 ギャラリーが見守る中、石段を真っ逆さまに駆け下りる選手たち。 住人のおばあちゃんが団扇を片手に、選手たちを見守るのが印象的な光景でした。 ゴール!! 参加選手の頂点に立ったのは ダウンヒル競技の全日本チャンピオン(2015)の永田隼也選手(AKI FACTORY/OAKLEY)。 歓声に包まれるお寺。 大晦日の除夜の鐘以外で、こんなに寺の境内に人が集まることがあるだとうかと考えてしまうような、人の数、そして熱狂的な歓声。 この雰囲気が味わえることもホーリーライド観戦の醍醐味と言えるでしょう。 感動さめやらぬ中、閉会式がゴール地点の宝土寺の境内で行われました。 終了を知らせる鐘を住職が撞いたあと、尾道市副市長による閉会の挨拶を経てトロフィーの授与へ
ギアの形をしたトロフィーが受賞者に贈られます。 マウンテンバイクのトップ選手から、アマチュアライダーまで、普段は走れない聖なる場所を走る他その光景を観ることができる楽しさ。それがホーリーライド観戦の魅力です。 レッドブルホーリーライドの次回以降の開催についてはアナウンスされませんでしたが、きっと近い将来、日本のどこかでまた開催されるはずです。マウンテンバイクに乗っている人なら、一度は参加を、皆さんのお住まいの近くで開催される場合はぜひ見にいって体感してもらいたいレースです。

出場者インタビュー

マウンテンバイクのライダーにとって、「ホーリーライド」に出場するということはどういうことなのか? そこで出場選手の1人、自転車メーカー「スペシャライズド」の MTB テストライダー、藤田翔也さんに大会前日の貴重なお時間を頂いてインタビューしてきました。 藤田翔也 (ふじたしょうや)さん MTB ダウンヒルライダー(ジャパンシリーズ エリートクラス)、スペシャライズド テストライダー。平日は静岡の自転車ショップで会社員として働きながら、休日はライダーとして活躍中。 ———今回何回目の出場ですか? 今回の尾道大会で3回目の出場になります。レッドブルホーリーライドは人気のレースなので、エントリーサイトがオープンになっても受付開始五分で枠が埋まってしまうほど。油断していると出場できないんです。実は1回目京都大会は申し込みそこねて出場できなかったんです。 いわゆるダウンヒル競技と違って、出場150人中のトップを決めるのがこのレース。タイムトライアルではなくてトーナメント戦で、そこがホーリーライドの面白さだと思います。第2回愛媛の石鎚神社の大会から、第3回の大阪勝尾寺大会にも出場して、前回の京都石清水八幡宮の大会ではベスト16に入りました。 ———あらためて、ライダーにとってホーリーライドの魅力は何ですか? 通常ダウンヒルのレースは、決められた山や森のなかをかけめぐるダートのコース。ジャンプのセクションがあったり、景色が美しかったり、自然の中を走る爽快感が魅力だけど、ホーリーライドは普段絶対に走れない場所、非日常のロケーションを走る刺激があります。 予選、決勝とレースが進みますが、タイムを競うレースではないので、上位選手は予選では無理をしません。僕の場合は予選では20位くらいに照準を合わせるようにしています。そこはホーリーライド独特の走り方かもしれません。 今回のコースは狭い路地が多くて、地面は石やコンクリートで危険度が高い。天気が悪い と地面が濡れてさらに危険です。わざわざ危険を求めることはしないけど、その危険が魅力でもあります。普段練習しているスキルやテクニックがホーリーライドのコースでどれだけ通用するか、それを試せる特別な場所です。 ———ホーリーライドに向けて特別な練習はしていますか? 特別な練習はしていません。ほとんどぶっつけ本番です。大会前日にコースウォークの時間がとられていたり、予選前に試走の時間があったりしますが、実際に走るまで本当にわからない。他のライダーさんも同じなのではないでしょうか。ただ、落差や段差や速度の感覚は普段のダウンヒルの経験が活きてきます。 そもそも練習できるようなコースではないし、当日試走してみるまでわからない、本当にぶっつけ本番のレースです。ただ、機材(自転車)のセッティングは石段などに適したホーリーライド用にしています。 第3回大阪のレースの時は雨だったのですが、予選で気合いを入れすぎてしまって、滑って転倒して…、コンマ数秒で予選に落ちてしまったんですね。だから予選はそんなに飛ばさないようにしています。前回の京都では、ほどほどに走ってちゃんと予選を通過できたので。予選でがんばっても、ポイントもないし賞金もないのでほどほどに。 ———ホーリーライドで勝つためには? 基本的にやっていることはダウンヒルなので、ダウンヒル競技の上位選手がだいたい決勝に残って、番狂わせはあまりないレースかもしれません。危険度の把握など、普段の経験が活きるので。そしてスキルがないと、気持ちや度胸だけではなかなか勝ち残れないレースです。 今回のコース後半では石畳の部分があって、晴れの日でも地面が滑ってひやっとします。そしてハンドルが壁に当たりそうなほど凄く狭い場所があったり、90度のクランクがあったり、人が並べないほど狭い道が多いので勝負が決まる部分がだいたい限られてきます。急な斜面が多いので、いかにブレーキを握らないかが重要になってきます。 決勝では4人で走るので、1人でやるレースとはブレーキングの仕方もラインの取り方も変わってくる。隣の人と接触すればすぐに転倒につながるし、狭いコースを抜いたり抜かれたり、観客はハラハラしてしまう。そこがこのレースの面白さだと思います。 今回の尾道のコースはみんなが初めて走るコースで攻略法がない状態。本当にゼロスタートなので、だれが勝つかわからない。そうなるとテクニックのあるダウンヒル競技の上位にある人が勝つ可能性が高くなると思います。 ———レッドブルのレースはエクストリームなレースが多いですが、やっぱり怖さはありますか? 斜度や落差に関しては、海外のコースでもっと凄い場所で走っている経験があるのでそれほど恐怖心はないのですが、やはり怖いのは石やコンクリートですね。通常のダウンヒルコースは地面が土なので、もし転んでもダメージが少ないのですが、第3回の大阪レースで転倒した時は、おもいきり固い地面に肘を打って、しばらく痺れがとれませんでした。 今回の尾道大会では今までのコースと比べても危険度が高いので気が抜けません。こんなところを自転車で走れるのか? というコースになっています。僕も危険を求めてこのレースに参加しているわけではないので、細心の注意を払っています。 むしろ、スポンサーが付いているような上位選手のほうが、安全には気を配っていますね。もしケガをすると他のレースに出られなくなってしまうので。今回も危険度の高さから、参加を見送ったライダーたちもいます。敢えて危険なレースに出ようという人は少ないと思いますね。走る楽しさもあるけど、楽しんでる暇のないコースです。 ただ、僕らのようなダウンヒルライダーだけではなく、勝負の結果に関係なくホーリーライドに参加すること自体を楽しみにしているライダーたちもたくさんいます。中には、そんな格好で走るのか? と思うほどユニークな服を着ている人もいます、前回はスーツ姿の人がいました。 他にも、ファットバイクで走ったり、サスペンションの付いていない自転車で走ったり、他のダウンヒルレースでは絶対に見られないようなライダーたちを見ることができます。そういう人たちをチェックするのも観戦の楽しみかもしれませんね。 Red Bull Holy Ride:公式サイト
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