
フルームへのブーイングはなぜ起こるのか?
今年のツール・ド・フランスを観戦していて、クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)に対するブーイングが気になった方も多いのではないだろうか? いくらフランス人選手が総合優勝できないからといって、ブーイングはひどい。そんなふうに思った人も多いだろう。たしかにフェアであるべきスポーツで、他国の選手に対するブーイングというのは、あまり気持ちの良いものではない。しかし、ここではフランス人の立場にたって、彼らがブーイングをしてしまう心理を考えてみたい。 まず根底にあるのは、多くのメディアで論じられている通り、1985年のベルナール・イノー以来、フランス人選手の総合優勝がないというフラストレーションである。なんとイノーの優勝から32年もたっているわけであるから、これは相当なものだろう。 しかし、それだけの理由だったら、そのブーイングはあまりにも自己中心的な印象をうけてしまう。問題は、そんなに簡単ではないはずだ。
過去にはもっとひどい事件も
ここでツールの歴史を振り返ってみよう。 1975年のツール・ド・フランスでは、地元フランスのベルナール・テヴネが絶好調で、フランス中が彼の初優勝を期待した。そこで最大のライバルになるのが史上最強の選手エディ・メルクス(ベルギー)の存在だ。事件は第14ステージの登りゴールで起こった。興奮したフランス人のファンが、こともあろうにメルクスの脇腹にパンチをしたのである。メルクスは脇腹を抱えながら苦痛の表情でゴールしたが、結局この年のツールは、この手痛い洗礼の影響もあり、テヴネの総合優勝に終わっている。 こういった「洗礼」の例は枚挙にいとまがない。 1904年には、山岳ステージでアタックしたフランス人選手を助けるために、たくさんの観客が結託して、追ってくる外国人選手たちの行く手をあからさまに阻んだということさえある。当時のツールは「スポーツ」というよりは、「冒険」であり、「荒くれ者たちの賞金稼ぎの場」であり、「フランスの祝祭」であった。そこには、「よそ者は、調子に乗るなよ。空気を読んで、フランス人を盛り上げれば、すべて丸く収まる」というフランス人たちの価値観があった。考えてみると、ブーイングというのは、当時と比べればずっと手ぬるいともいえるのである。 メルクスの殴打事件の例を見ればわかるとおり、フランス人は「強すぎる者」に対して異常ともいえる嫌悪感を示す。ちょっとうがった見方をすれば、ツール7勝のランス・アームストロング(アメリカ)を執拗なまでの捜査によりドーピング違反へと追い込み、すべての勝利を剥奪したのも、そのきっかけを作ったのはフランスの捜査当局だ。
豊富な資金力をもつスカイにも反感!?
フルームがブーイングを受ける理由は、そのアシスト陣の豪華さにもあるだろう。 ミケル・ランダ(スペイン)、ミケル・ニエベ(スペイン)、ミハウ・クヴィアトコウスキー(ポーランド)、セルジオ・エナオ(コロンビア)、ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ)、ゲラント・トーマス(イギリス)、誰をとっても他チームへ移籍すればすぐにエースとなれるほど強い選手ばかりである。こんな豪華アシスト陣に助けられてレースを走っているのであるから、「勝って当たり前なのでは?」と思われてしまうのだ。
【2017ツール・ド・フランス 総合順位】
1 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)86h20'55"
2 リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール・ドラパック)+54"
3 ロマン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアル)+2'20"
4 ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)+2'21"
5 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)+3'05"
6 ダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ)+4'42"
7 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)+6'14"
8 ルイス・メインティス(南アフリカ、UAEチームエミレーツ)+8'20"
9 アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)+8'49"
10 ワレン・バルギル(フランス、サンウェブ)+9'25"
109 新城幸也(日本、バーレーン・メリダ)+3h18'16"
マイヨヴェール(ポイント賞)
マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)
マイヨブランアポワルージュ(山岳賞)
ワレン・バルギル(フランス、サンウェブ)
マイヨブラン(新人賞)
サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)
チーム総合
チームスカイ


